「うおーっし、できた!」




台所にて歓声。

身体全体を使って喜びをあらわにするの前には、美味しそうなおかずが並んでいる。

少しだけ摘まんで味見をしてみると、いつも自分で作っている料理よりも美味しい。料理の腕が上達したことにまた歓声を上げた。




「・・・・・大分マシになったじゃねえか」


「うん!これもガッキーのおかげだね!本当に、本当にありがとう!!!」


「ガッキー言うなボケ。・・・ったく、さっさとテーブルに運ぶぞ」


「ラジャっ!」




と一緒に料理をしていた荒垣は、今にも飛び出しそうなほど喜ぶ彼女を制して、テーブルに運ぶように促した。

鼻歌交じりにおかずをテーブルに持っていくを見て、荒垣は溜め息を吐いた。

その顔は、決して不機嫌ではなく、優しい表情なのだが。・・・そんな所も、彼のオカンと呼ばれる由縁なのかもしれない。


ご飯出来たから降りてきてー!という、の声で、ぞろぞろとラウンジに集まりだした。

今日は週に1回の寮生全員が集まって夕飯を食べる日なので、遅くても全員が集まることになった。




「お、今日はが作ったのか!の手料理ってなーんか、こう、素朴っていうかさ。普通にウマいっていうの?俺的にはすっげー好きなんだよな」


「そう?ありがと、ジュンペー」


「あたしも好きだなー、の手料理」


「うん、私もちゃんの手料理おいしいと思うな」


「ほんと?!・・・えへへ、ありがとう」




嬉しそうに礼を言う。はにかんだ顔が何とも可愛いと、女子2人も素直に思った。

はみんな美味しいと言ってくれたので、ほっとした。そして向かい側に座る真田に向き直った。

今日までが、荒垣に教わりながら頑張っていた理由は、この目の前に座る男にあった。


自分の好きな、もとい付き合っている男性においしい料理を食べさせたいと思うのは、女の子なら考えたことはあるだろう。

しかも、相手は体育会系だ。サポートしてあげたい、元気になってもらいたいと思うのは不思議なことではない。

そして、は真田に元気になってもらうため、おいしいと言ってもらうために、今の今まで頑張ってきていたのだ。


しかし、忘れてはならないことがあった。


はその大事な部分を、失念していたのだった。




「・・・明彦、おいし・・・・・・・」




そして彼女は絶句した。いや、気付いたのかもしれない。自分の失念していたことに。

彼女の異変に気付いたのは、彼氏というポジションにいる真田ではなく、何故だかアイギスであった。




さん、どうかしたでありますか?具合でも悪いのですか?」


「あれ、本当だ。・・・先輩、何か悪いものでも食べたんですか?」




天田も気付き、視線を追うようにして寮生全員がを見ていた。勿論、真田以外だが。

は絶句していたかと思うと、俯いてしまった。この数分の間に、一体何があったのかと各々が思案している中、

真田は黙々とご飯を食べ続けていた。そう、彼女をこんな状態にしてしまった原因のものを。




「えーっと、話が見えてこないんッスけどー・・・、どしたの?」


「あ、もう駄目だ。、完全に自分の世界に入ってる。これは話しかけても無駄だと思うよ」


「一体、いつからこんな状況になったんだ?私達が目を離している間には何かしていたか?」


「・・・あ、もしかしてちゃん」


「え、風花分かったの?」


「・・・うーん、多分なんだけど、ね」




そういって困惑している面々に、真田の食べている茶碗を指差した。

その瞬間、理解したらしい。荒垣にいたっては、だから言ったろうと言わんばかりに盛大な溜め息を吐いた。

真田の茶碗には、盛り上がるほどに大量にかけられたプロテイン・・・・・・・。

に目をやると、分かってた・・・分かってたはずなのに・・・やっぱり駄目なの私・・・などと呟いている。

皆、真田の味覚音痴の酷さについては理解しているので、に同情せずにはいられなかった。




「・・・・・ど、どうする?これじゃあ、が可哀相ッスよ」


「確かに。これではが報われないな。それにしても明彦の天然さには私も呆れたよ」


「・・・ちゃん、かわいそう」


「うーん、どうするって言ってもねー。あたし達に出来ることって・・・なくない?これはと先輩の問題なんだしさ」




などと夕飯そっちのけで討論している寮生をよそに、がいきなり立ち上がった。

話に集中していた寮生は、いきなり立ち上がったに思いっきり驚いた。そして困惑した。

はソファから離れて真田の隣にすっと立った。その光景が、異様に怖い・・・。

そして手を上げたかと思うと



バッチーン!!!



「な、ビンタぁああ????!!!!!!!」


「良い平手打ちであります。効果抜群、であります」


「ワン!」




思いっきり真田の頬めがけて、平手打ちをしたのである。




「もう明彦なんてしらない!プロテイン漬けになっちゃえばいいんだ!!」




目に涙を溜め、走って階段を上っていってしまった。少し経って勢いよく扉の閉まる音が聞こえた。

静寂に包まれるラウンジ。

そんな中、頬を紅葉マークにした真田だけが、今の状況をよく理解していないようだった。




「お、俺が何したっていうんだ!」


「いや、この場合、確実に真田サンが悪いッスよ・・・」


「俺の何が悪いんだ!!!がっ!」


「明彦!いい加減にしろ。のことをもう少し考えたらどうだ」


「アキ、謝りに行け。理由が分からないなら、こいつらに聞け。
失念していたアイツも悪いが、それ以上にアキ、お前も悪ぃからな」




頭にクエスチョンマークをいくつも飛ばしている真田に岳羽達が説明し、

真田が急いで3階にあるに部屋に行き、

その他の一同が食事を再開する。




そんな僕らの日常風景

(まあ、見慣れてるし、結局何だかんだいってあの2人、ラブラブなんだよな)(順平談)












(20070221)
(P3未クリアなのに真田夢、とも言えない何とも微妙な産物)(あんまイチャコラしてない)(リベンジ!)