我が唯一無二の親友であり、とんでもないトラブルメーカーでもある涼宮ハルヒを団長として発足したクラブ、
その名も 『世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団』 略して “SOS団” に言われるまでもなく入団した私は、
今日も今日とて、忠犬よろしくハルヒの言いつけを守って部室へと足を運ぶ。
ドアを開けると、
小動物のような可愛らしさを持った、我がSOS団のマスコットキャラ的存在である朝比奈みくる先輩がすでに来ていた。
朝比奈みくる
この間ハルヒに拉致られて(実際は私も一緒に拉致った。不可抗力!)SOS団に強制入団させられてしまったお方である。
その外見と性格ゆえにハルヒのいいおもちゃになっていて、ハルヒによって今後もっとあられもない姿になるのだけれど、
それはそれで流石にみくる先輩が不憫なので(男性的には嬉しいんだろうけどね!)、
これからは適度に手助けをしようと心に誓った。
「さん、どうかしたんですか? その、立ち止まったりして」
「あ、いえ! ぼーっとしてただけなので大丈夫です。心配いりません」
「それなら良かったです。 …えっと、涼宮さんは?」
「私は見てませんね。 うーん、来るとしたら多分キョンくんと一緒だと思いますよ」
クラスが違うと帰りのSHRの終わる時間も違うから、部室に行く時はハルヒとはバラバラに行くことになった。
ま、キョンくんが居るから問題ないとは思うけど。
とか言いつつ、意外とこの2人も一緒に部室に来てなかったりするんだけどね。(あれ、駄目じゃない?)
後ろ手にドアを閉めて、この間コンピ研からガメってきたパソコンの近くに鞄を下ろしてパイプイスに腰をかける。
有希が先に部室に行ったのは知っていたので、イスに座って黙々と本を読んでいる有希に挨拶をしてまた正面に向き直る。
みくる先輩を見ると、少し視線を泳がせながら私の正面のイスに腰を下ろした。
「この間とその前はすみませんでした。…その、助けられなくて」
唐突に話し出した私に驚いたのか、みくる先輩は少したじろいた。
私の発した脈絡もなかった言葉の意味をたっぷり時間をかけて理解してから、みくる先輩は困ったように微笑した。
「ううん、気にしないで。拒否できなかったわたしが悪いの。 だからさんが謝ることないよ?」
「でも、あの時私が居れば、少なくともみくる先輩を校門に立たせるという暴挙を止められたかもしれません」
「それは……、そうかもしれない。けど、やっぱり駄目だったと思うの」
「………。 トラウマを作らせてしまっていたら、本当にすみません」
「そう何度も謝らないで。さんは悪くないわ。わたしの運が悪かっただけ」
そう言ってみくる先輩はまた苦笑した。
みくる先輩が団員になってから今日までというもの、ハルヒは好き放題のやりたい放題だった。
私は運良くというか運悪くというか、みくる先輩が被害を被っている時に限って呼び出しがかかってしまい、
結果、みくる先輩とキョンくんがハルヒに振りまわされ苦労している。(本当にごめんとしか言いようがない)
勿論知っていたから止めることは出来ただろうし、出来なくてもみくる先輩とキョンくんの負担は軽減できると思っていたのに
間が悪いというか、そんな感じだった。(絶対にコンピ研部長に胸だけは揉ますまいと思っていたのに!!!)
「ほら、気にしないでって言ったでしょ? わたしなら大丈夫だから、ね?」
「……はい。 でも、嫌だったら言ってくださいね?」
一瞬だけ、きょとんっとした顔をして次の瞬間には女の私でもとろけてしまいそうな程の微笑みで、
「その時はさんに言うようにするね」 と言った。
うーん、何とも可愛らしいことを言ってくれる。本当に年上ですか?(キョンくんがデレる気持ちがよく分かるよ!)
そこでハッと、そういえば私も年齢詐称してるからみくる先輩のこと言えないじゃん!と思いなおした。
それから2人で談笑をしていると、ガチャリ、と何の前触れもなく唐突に部室のドアが開いた。
私と朝比奈さんはいきなり開いたドアに心底驚いて、2人揃ってビクっと肩を上げた。
ドアを見ると、
「な、何だキョンくんかよー。あー、ビックリした」
「何だとは失礼だな」
そんな私の言い分に多少憤慨しながら、キョンくんはみくる先輩と有希に挨拶して私の隣に腰を下ろした。
どうやらキョンくんはハルヒと別に来たらしく、ハルヒの姿はなかった。
まったく…、うちの団長殿は何をやっているんだか……。ろくな事ではないだろうけど(私の勘がそう告げている)。
「だって急にドアが開くんだもん、ビックリしちゃったよ。で、誰かと思えばキョンくんだし」
「勝手に驚いたお前が悪い。大体ドアは開くもんだろ」
「そりゃそうだけどさー。 つか、みくる先輩もビックリしてたし。 驚きましたよね、みくる先輩」
「うん。でも、何でだろうね。さっきのはすごく驚いた」
「ですよね! うーん、キョンくんミラクル?」
「アホか」
コツンと頭を軽く小突かれた。
むー、最近仲良くなったからって手加減をしなくなったかこのやろー。みくる先輩にはしないくせにー。
そんな私たちのやりとりを見ていたみくる先輩は、くすくすと可愛らしく笑っていた(ああ、癒される)。
「、アホ面してるぞ」 とキョンくん。
「うるさい、余計なお世話だアホ!」
「アホはお前だ」
「キョンくんはいつからそんな子になったの!お母さん悲しいわ!」
「俺はお前に育てられた覚えは断じてない」
「ムキー!私だってキョンくんを産んだ覚えはない!」
発言が低レベル化しだした言い合いに、とうとうみくる先輩はお腹を抱えて笑い出してしまった。
お互い顔を見合わせて沈黙した後、大人しくしていることにした(キョンくんは少しバツが悪そうな顔をしていたが)。
思い出したようにキョンくんは何やら鞄を開けて取り出そうとしていた。そして机に置かれたオセロ盤。
「うおー、オセロなんて久し振りに見た。 キョンくんの?」
「うちの押入れからひっぱり出してきた。 やってみるか?」
「やるやる!キョンくんに何か負けるもんか!」
「俺もやんのか?!」
「オフコース!」
そして結果は惨敗でした。
彼があんなに弱いのは、彼がそういうの得意じゃないからだと今までずっと思ってたけど、違うよキョンくんが強すぎるんだよ。
おかしい!私のシナリオでは、キョンくんは見るも無残に私に敗戦するはずだったのに!
勝った瞬間のキョンくんの何とも言えない表情がひどくムカついたので、もう私は不貞寝することにします。
「何だ。、寝るのか?」
「ふーんだ。 ……ハルヒ来たら起こしてね」
「りょーかい」
隣で苦笑しているっぽいキョンくんとは別方向を向いて寝る体制になる。
パチリ、パチリという音と、ページを捲る音とで私は意識を沈ませていった。
「!いい加減に起きろっていってんでしょ!」
という怒声とペシっと叩かれた頭とで、やっと私の意識は覚醒した。…どうやらハルヒが来たらしい。
キョロキョロと辺りを見渡すと、みんな私を見ていた(なぜにハルヒは仁王立ち?)。
あはは、そんなに見られると反応に困ります。
ハルヒは未だに覚醒しきれずにぼーっとしている私を華麗に無視して(酷くないですかハルヒさん)、自分の隣を指差した。
そこで初めて私は、ハルヒの隣に人が立っていることに気づいた。
「彼が待望の転校生! ほら、自己紹介して!」
「古泉一樹です。以後お見知りおきを」
にっこりと、女子ならば卒倒しそうなほどの爽やかな笑みで、転校生の古泉一樹くんは挨拶をした。
そんな転校生に、失礼だとは思いながらも私は挨拶を返すことが出来なかった。
それほどの衝撃を、彼は私に与えたのだった。
( 20071112 )
ちょー中途半端な終わり方してます、ごめんなさい。
それにしても、キョンと仲良しすぎですか?小突き合えるんだぜ?言い合えるんだぜ?
まあ、この話に入る間に仲良くなったということで。やっと古泉が出てきましたねー。よっし、頑張るぞ。
20071225 : 加筆修正