泣いて、笑って、怒って、喜んで。
よくまあ、そんなに表情がころころ変わるもんだ。
見ていて飽きない、確かにそれもそうだ。アイツは行動の一つ一つが面白いからな。
見るたび見るたび変わる表情に、いつの間にか見惚れてるっていうのもなんだが、目で追ってる自分が確かにいて、俺はアイツが好きで堪らないんだなあ、って実感する。いや、惚気とかじゃなくてよ。



「元親ー!もーとちかー!!」



俺の名を呼ぶアイツの声が好きだ。何だかわかんねえけどよ、アイツに名を呼ばれるといつもと違う気がすんだ。
ああ?意味わかんねえって?・・・・・言ってる俺だって意味わかんねえけどよ、あー、あれだ、『特別』って感じがすんだよ。
だから惚気じゃねえって。
あの心地よい声で紡がれる言葉のすべてが、俺の中で溶けていくようで好きだ。



「ちょっとー!居るなら出てきなさいよ!元親の好きな甘味持ってきたの!」



強がりで、意地っ張りで、泣き虫で、寂しがり屋で、怒りやすいアイツを扱えんのは俺だけだろ。苦労してんだよ、俺も。
・・・まあ、助けられてんのも事実だけどな。
いつだってアイツは些細な変化にも気付いて、いつだってアイツは俺を底から這い上がらせてくれる。
救われたなんてもんじゃねえ。感謝してもしたりねえぐらい、俺はアイツに助けられた。
だから俺もアイツを護りたい。この命が果て、体が朽ちるまで俺はアイツを、護ると誓った。



「あー!!!元親こんな所にいた!探したんだよ?」

「ああ、悪い。こいつが中々離れてくれなくてな」

「うわー、猫ちゃんだ。可愛い!・・・甘味食べるかな?」

「さあな。やってみたらどうだ?・・・っと」

「あっ!!!猫ちゃんが!」



縁側に座っていた俺の膝の上から、猫はの隣をすり抜けてどっかに行ってしまった。
はがっくり肩を落として残念そうだ。
これだから見てて飽きないんだよなあ、とまた思った。
秋風が少し、肌寒い。



「猫ごときでそんな残念そうにすんなよ。あー、ほら、甘味持ってきたんだろ」

「うん。この間さ、元親が食べたいって言ってたやつなんだけど、一緒に食べていい?」

「おう。ここじゃ寒いから俺の部屋行くぞ」

「はーい。変なことしないでよね」

「ああ?・・・・・・さあ、どうだろうな」

「助平元親ー!」

「お前、ちょっと待てコラ!」



俺の隣にはコイツがいる。それが当たり前なんだ。俺はその当たり前が当たり前じゃなくなることを恐れる。
だから俺はを護ると誓ったんだ。
たとえ、年老いるまで共に過ごすと望むことが、儚い夢だとしても、だ。



胸中に眠る
別れの言葉よ果てに









(20070103)(BASARA DREAM FESTIVAL様へ提出していたもの)(お疲れ様でした)