第 玖 話
午後11時半。
最近寝すぎなんじゃないかと思う(実際に寝すぎなんだろうけど)。
人前で熟睡できないぼくにしてみれば、これはかなり珍しいというか、初めての事だ。
ま、睡眠不足じゃないんだからいいんだろうけど。
床に転がった電話をしまい、出掛ける支度をする(まあ、それほど大した支度じゃないんだけど)。
そして、ぼくと同じぐらい寝続けている彼女を横目で見る。
白を基準としたシンプルな半袖のパジャマを身に着けて、
この間、ゲーセンでとってあげたネコのぬいぐるみを抱いてすやすやと眠っている。
「・・・・・・・」
行かなくては。ロマンチックな気分に浸るのはまだ早すぎる。
書置きを残して部屋を後にした。
*
人工的な光の眩しさに目を覚ました。(朝かと思ったけど違った)
起き上がると、人間失格が居た。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・?
えーっと? あーーーー、あー!!むいみちゃんと殺ってきた後!!(バトルだよね、あれは)
だから人識がここに居るんだ。
つーことはいーは重症だよね?
私の布団の隣に敷かれているいーの布団に、やっぱり寝かされていた。
「お、起きたか。はよ」
「おはよう」
「起きた早々わりぃけど、ちと手伝ってくんねーかな?」
「うん、別にいいけど」
パジャマで恥ずかしいけど、今ここで着替えるよりはマシなので、少し身だしなみを整えて人識の隣に移動する。
人識はいーの顎を嵌めるところだった。い、痛そう・・・。
「指の方やっといてくれ。さー、肩嵌めるぞー」
「やり方とかイマイチよく分かんないけど、針金使うんだっけ・・・?」
「適当でいいだろ。どーせまたこいつの事だから怪我すんだろうし」
「うーん・・・、見てるこっちが痛いよ・・・」
「マゾだからいーんじゃねーのか?」
「そっか」
我ながら酷いな、とか思ったけど、人識が笑ってるので別に良しとしよう。
人識の言うとおり、これからもいーは他人の為に自分が傷付いていく。本人はそれを否定しているけれど。
ずーっと、いー以外の人達も、傷を負っていく。死んでしまう、人も居る。
私は、それを黙って見ていられる?
「おーい、大丈夫かー。?」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「欠陥の事は気にすんな。弱いのにあんな事やってっからだ。自業自得だっつーの」
「・・・うん、そだね。指やってあげなきゃ」
「手伝うわ」
「ありがと」
人識のやり方を見ながら、同じように手当てしていく。
結果的に直るけど、いー、また折るんだよなぁ。本当、神経マヒしてんじゃないかって思うよ。
こんな事やってても眠ってるいーは相当、麻酔が効いてるんだな。
麻酔ってやだな。私は絶対に怪我しないでいよう。(痛いの嫌いだし)
全部の手をぐるぐる巻きにし終わったら、もう朝日が差し込んできた。
朝になっちゃった・・・。ま、別にいっか。
「終ったね」
「疲れたな」
ドサっと2人一緒に後ろにある私の布団に倒れる。
いーが起きるのは明日だったような・・・。(曖昧になってきてる、やっぱり)
今日は人識と一緒か。・・・・・・・ん?人識と、一緒?
・・・・・・・・・着替えどうしよう。
もう寝る気もしないから、着替えなくちゃいけないのに、き、着替えられないじゃん!!
みいこさん、居るかなぁ?
「なーー」
「ん?な、何でしょうか?」
「寝ていい?」
「どうぞ、私のでよければ」
「んじゃ、ねっか!」
「はい?」
いやいやいや、何、満面の笑みで両手広げておいでおいでやってるの?!!
む、無理だから!!もう、色々と私ギリギリだから!テンパってるから!
「大丈夫だ、何もしないから。こいつじゃあるまいし」
「や、信用ないよ。まだいーの方が信じられる?」
「疑問系かよ。ほら、さっさとこっちに来る」
「眠くないし」
「起きてもする事ねーんじゃねーの?この状況じゃ着替えらんないだろ?」
「それはー・・・・・・、そうだけどさ」
「決まりー。ほらほら遠慮なさんな」
「私の布団」
「気にすんな」
言ってる事むちゃくちゃだよ・・・。
でも、人識の言う事も一理あるし・・・。やる事はないんだけど、な。
人識の寝てる間に着替えをするしかない。寝ないように頑張らないと!
「わかったよ」
「かはは、そうこなくっちゃ」
渋々、人識の隣に横になる。真ん中だから、いーもすぐ(本当にすぐ)隣で眠っている。
人識はよっぽど眠かったのか、寝息を立て始めた。しばらく経って、起き上がろうとしたら人識に抱きすくめられる。
どさくさに紛れやがって・・・・!!!何もしないって言ったじゃん!!
やっぱりいーの向こう側だと思った。
離してくれそうにないので、仕方がないから眠る事にした。意外にも、思ったよりすぐに眠気が襲ってきて自然と瞼がおちてきた。
よし、寝たな・・・・。
のやつ、中々寝ようとしなかったな。しかも起きだそうとしてたし。
ま、今はぐっすり眠ってるけどな。
欠陥のやつにだけ美味しい思いをさせてたまるか。
一歩リードって事で。
からじゃ見えない位置に赤い華を咲かせておいた。
かははっ、こりゃ傑作だな。
眠っている少女に優しく頬にキスを落とした。
← →
≫人識君夢じゃん!!あーうー。しかも予定とはまったく違う展開に・・・!!
次は予定通りにいきたいな。これはむいみちゃんとバトった後ですよ。
次回は欠陥製品が目覚めます、多分。(20050806)