第  話








「よう。目覚めたか」






という人識の声を聞いて、いーの方を見ると目を開けて不思議そうな顔をしている。

まだ状況を理解してないらしいけど、気にせずに、いーの傍に近寄る。






「いー、おはよう」


「いやー、それにしてもお前すごいところに住んでるのな。住所すっげー分かりにくいし。
 
 それに、住人も変わってる。隣の部屋のねーちゃんに包帯とか借りに行ったんだけど、

 俺の顔みて驚かなかったのあのねーちゃんが初めてだ。いや、それにしてもよく

 起きてくれた。あれじゃないか?寝不足?疲れてたんだろうな、色々」


「――――えっと」






久しぶり(と言っても1日ぶり)に聞いたいーの声に、何だかほっとした。

ずっと、心配だった。分かってた、筈だったのに。

あの時に、起きてでも止めるべきだったのかと、思ってしまったりして。

ずっと、心配だった。



いーが起き上がろうとして、倒れそうになったので、慌てて支える。

人識が何かいってるけど、いーの身体が心配だった。






ちゃん、泣かないでくれるかな」






何時の間に、泣いていたんだろう。涙が目から溢れてくる。

必死に止めようとしたけど、止まらなくて、そしたら人識が頭を撫でてくれた。

少し、楽になった。






「いーのバカ!!人識が居なかったら、死んでたかもしれないんだからね!!!

 もう少し、自分の事、大切にしてよ・・・」






助かるって知ってたけど、分かってたけど、心配じゃないわけがない。

戯言シリーズを読んでて、ずっと、思ってた。いーは優しすぎるんだって。






「なーに俺の愛しのちゃんの事泣かしてんだよ。おー、よしよし」


ちゃんに触るな。汚れる。・・・ごめんね、ちゃん。ありがとう。零崎も」


「ううん。生きててよかった・・・」


「別にいいよ」






目をこすって、笑う。上手く、笑えてるといいな。






「で、零崎。お前、ちゃんとどこで知りあった?今回が初めてじゃないんだろう?」


「なんだ?聞いてなかったのか?首の傷つけたの俺っち」


「やっぱり」


「え?!気づいてたの?」


「怪しいとは思ってたんだ。でも、否定して欲しかったな。まさか零崎、ちゃんに何かしてないだろうな?」


「ああ、とはき「あー!!!!人識、そろそろ行かないと駄目じゃない?!!!」


「まだ大丈夫だよー。何?、照れてんの?言われたくないの?ちょっとジェラシー」


「やっぱり何かしたんじゃないか零崎、言え」


「いーも詮索しないで!!!潤さんに言いつけるよ!!!」


「それだけはごめんだよ」






いーもこういう時だけ喰いついて来るんだから!!全く、苛めだよ、これ・・・。




















*




















むいみちゃんのアパートに向かう途中で思考する。

ぼくの為に泣いてくれた彼女。その涙はとても綺麗だったと思う。

久しぶり・・・・か?それとも初めての体験か?分からない。

でも、そんな存在がまだぼくの周りに居た事に、衝撃をうけた。涙を流す、存在が居た事を。

全てを知っている・・・・・と、哀川さんから聞いた。

そして、護ってやってくれ、と初めて頼まれてしまった(請負人からの頼み事とは凄い)(戯言だ)。



もう涙は流して欲しくないと、思った。

ぼくの為にも、他の人にも。

・・・・・・・・・・・・戯言だけどさ。



それともあいつなら、傑作とでも評しているのだろうか。

だったら、心配させないように、まずはこっちを終らせるとしようか。

静かに錠開け専用鉄具(アンチロックドブレード) を取り出した。

















     











≫そろそろで終盤ですね。クビシメ編はあと2回・・・か1回で終りますよー。
 長かった・・・。次回は人間失格+欠陥製品か、赤色+蒼色が来ますよ!!
 (20050810)