第 拾壱 話








帰ってきたいーは、本当に凄い有様だった。(ギプスにガーゼ)

何で骨を折れるのか、不思議で堪らない。いーの気持ちなんて分からない。

いーの身の周りの世話をこれからしていく訳だけど、た、大変だ・・・。(みいこさんにも手伝ってもらった)

今日は、いーの手が使えないので、(ギプスで運転は無理)友のマンションまで歩いてきた。

流石に徒歩はキツかったけど、いい運動になったと思えば悪い気はしない。(最近、何かとだらけてたし)



城咲のマンションの32階。ここに来るのはこれで2回目。

前来たときは、私の服を借りに来た時だったかな?






「友ー、ぼくだー、中に入ったぞー」


「お邪魔しまーす」






いーと一緒に廊下を進んでいく。この次点で、すでにコードやら何やらが転がっている。

すでに廊下じゃない・・・・・・・。2、3回転んだ事がある私には、これがとても廊下だとは思えなかった。

いーは慣れた様子で、さっさと先に進んでしまう(私にはお構いなし)。

ギプスを付けた状態で転んだら、顔面ヒットするよなーなどと考える。






「友ー、どこにいるー?」


「早く出てこないと、このまま友の家で迷うよー?」


「それはないと思うよ」


「や、私の場合、迷って餓死しそうな勢いだよ」


「つまり方向音痴なんだね」


「高所恐怖症ではないってこと」


「・・・・・友ー、ぼくだけどー、どっかにいるんだろー?」


「シカトですか、い「おう、こっちだー、こっちこっちー」






あえなく撃沈。遮断されてしまった・・・・・・・。

いーはそのまま立ち止まってしまったけど、私は最初から知っていたので、躊躇いもなく声のしたほうへ足を進める。




行き着いた先には、赤色の請負人と、蒼色が確かに居た。






「よう。久し振り」


ちゃん、久し振りなんだよ!」


「お久し振りです、潤さん。友も、久し振りだね」






潤さんに手招きされたので、大人しく潤さんの隣に腰を降ろす。






「よう。久し振り」






私にした挨拶をいーにもする。






「わわわわわ、いーちゃんなんだよ」






何故か2人とも、缶コーラを飲んでいた。

何か意味があるのだろうか?(特になさそうだけど)






「わわわ。いーちゃん、その手、どうしたの?心なし太くなってない?」


「皮膚が硬質化したんだ。思春期心因性皮膚硬化症だよ」






いーもよく嘘を吐くなぁ・・・・。この1ヶ月生活していて、痛感した。

あまりいーの言う事は信じないように心がけよう。(今までも、これからも)



そしていーはこちらを見る。否、潤さんのことを。






「・・・・・・・・・どうも、潤さん」


「いよう、主人公」






にやにやとした微笑みをいーに向ける潤さん。

隣に居てもそれがよく分かる。(口の端が上がってるし)






「何やってるんですか?玖渚の秘密基地で。また通り魔について、訊きたいことでも?」


「いやいや。そういうんじゃない。通り魔の件は、一応ケリがついたし」


「そうなんですか?」






潤さんが頷く。






「今その話をしてたトコなんだよ、いーちゃん。いーちゃんとちゃんも参加する?4人寄れば文殊の萌えだよ」


「いや、あんまり興味ないな」


「私も遠慮しとく」






人識は生き残ってるって知ってるから。

心配をしてないわけじゃないけど、人識は大丈夫だと思う。

直感的にそう思う。なんか不思議。






もさ、知ってっと思うけど席外してくれねぇ?」


「あ、はい。んじゃ友、行こ」


「うーん。分かったんだよ」






手を繋いで部屋を後にする。

友は、少し私をひっぱって走ってたかと思ったら、急に立ち止まったので、

危うくコケそうになった。(コードに足がひっかかった)






「友?どうしたの?」


「うふふっ、僕様ちゃんこの間秘密の通路を発見したんだよ!!」


「通路?それは大発見だ!」


「それでは行ってくるんだよ。ちゃんは待ってて」


「気をつけるんだよー」






たったと行ってしまった友を見送って、このまま下手に動くと迷いそうだから、

その場に座り込む。友とかいーとか潤さんとか、よく迷わないよなー・・・。(私には無理だ)

(途中で寝そうになった。危ない、危ない)しばらくして、潤さんが歩いてきたので、立ち上がる。






「こっちは終ったぜ?もうあっちに行ってもだいじょぶだ」


「今はまだ駄目ですよ。邪魔しちゃいけないのです」


「ふーん。お前も頑張れよ。いーたんになんかされたらあたしに言え」


「大丈夫ですよ。いーには友が居るじゃないですか」


「それなら大丈夫か。じゃ、縁がなくてもまた会おーぜ、


「待ってます」






そのまま行くかと思ったら、潤さんは顔を近づけて頬にキスをした。






「なっ・・・・・・、潤さん?!」






潤さんはシニカルに笑って、行ってしまった。

やっぱカッコイイな潤さんは。頬に手を添える。







これでクビシメロマンチストは終った。初めの物語は終焉した。



それでも私の物語はまだ続く。まだ、まだ。









『甘えるな』








それは、私にも言えることだった。





















     











≫クビシメ編は終了!!次からは、ちょっと番外っぽくなるかも。
 色々書いていきたい・・・。潤さんはカッコイイですねー。うん、うん。
 (20050811)