第 拾弐 話








つい先ほど、いーが拉致旅立ち(?)ました。

澄百合学園へ潤さんのお手伝いに。行きたかったけど、今回は危ないから着いて来るなと止められた。

折角、いーの女装姿が見られると思ったのに・・・!!(レアだし、実際に見てみたかった)

見かねた潤さんが、写真を撮ってきてくれるとのこと。


流石潤さん、わかってらっしゃる!!!


ので、帰りを心待ちにしてるわけだけど、帰ってくるのは明日だろうし、いーで遊べないので、もの凄く暇だ。いつも暇だけれども。

アパートのみんなに構ってもらいたいけど、忙しいみたいで・・・・・・・・・。






「あーうー、暇だよー。独り言も多くなっちゃうじゃないかー」






・・・・・・・・・。散歩でもしてこようかな・・・・。




















*




















ふらふらと歩いていたら、人識と始めて逢った場所に着いた。

最初、殺されそうになったしなー。私もよく生き残れたもんだよね。自分に驚きだよ。

そ、それにさ、ふぁ、ファーストキスまで奪いやがって。だいたい初対面なのにあんな事する?

そもそも私は女子平均並みの身長しかないんだから、人識のタイプじゃないし。

あー、なんか腹立ってきた・・・・・。次逢ったら蹴りいれてやる。






「ちょっとそこの可愛らしいお嬢さん」


「うわっ!!!!!」






自分の世界に入り込んでたのか、背後に人が居たのに気が付かなかった。


反射的に振り返ると、日本人離れした長身で、手足が異常に長く針金細工のような印象を受ける。

背広にネクタイ、オールバックに銀縁眼鏡という本人は似合ってるつもりなのか、

そのごく当たり前すぎるファッションが、全くと言っていい程似合っていない。

『自殺志願』(マインドレンデル) にして『二十人目の地獄』そして、あの『人間失格』の兄――――――



零崎双識






「私の顔になにか付いてるのかな?」






もの凄く凝視してたらしい。苦笑されてしまった。とても綺麗に笑った。






「い、いえ!すみません」


「別に謝る事はないよ。私の方こそ、急に声をかけたりしてすまなかったね」


「私の方こそ、大声を出してしまってすみません」






どうしてこんな所に居るの?!!ここ京都ですよ?!あれ?京都だっけ?

って流されちゃ駄目だーーー!!!!!

どうしてここに居るのか訊かなくちゃ。






「(流石に名前知ってたら怪しいしね)名前、訊いてもいいですか?」


「そうだね、名前を知らないという事はお互いにとって不便だね。名は世界に誇れるものだと私は常日頃思っているのだよ。

 ああ、私の名前は双識。零崎双識という」


「双識さん、ですね。私は といいます」


、か。実にいい名前だね。君にピッタリの名前だ、うんうん」






知ってますよ。とは言える訳がない。双識さんと話すとどうもペースが乱れる。






「で、双識さん。私に何の用だったんですか?」


「あー、そうだったね、うっかり忘れていたよ」


「(忘れてたのかよ!やっぱり人識のお兄さんだけあるね・・・)」


「この辺で、髪を染めていて、耳に携帯電話のストラップをつけて、顔面に刺青をした男の子を見たことはないかい?」






やっぱりそうだと思ったよ!!!

双識さんが居るってことは、人識を探してるのに間違いないわけで。

別に人識から口止めされてないし、言ってもいいよね。もう京都にはいないわけだし。






「話しましたよ?丁度この場所で」


「それは本当かい?!やっと見つけられたか・・・。ここまで色々と苦労に苦労をかさね・・・」


「双識さん?あの、話したんですけど、人識、もう京都には居ませんよ?」


「それは解っている。解っているともさ、ちゃん。私はね、人識が君と会って話したということに驚いているのだよ」


「え?どうしてですか?」


「弟と話せる人間なんて、『零崎』ぐらいのものだからね。

 ・・・・君も不思議な気を纏っているようだけど、君は一体何者なんだい?」


「一般人ですよ」


「『零崎』と話せる『一般人』ね。話すだけなら誰にだって出来るが、あの弟に殺されなかった、という事に私は感心しているよ」


「・・・・・・・・」






思いに耽るように、宙を見て、さっきもと話を続ける。

人識の事でも思い出していたのだろうか?その横顔は、優しいものだけれど。






「さっきも言ったけど、君には不思議な力があるね、ちゃん。人識が殺せなかったのも無理はない」


「殺せなかった?」


「そう、私ですら殺せない、殺しちゃいけないんだよ。ちゃんは、そういう、不思議なものを持っている」


「不思議な、もの」


「少し、話がすぎたかな?そろそろいくとしようかな」


「あ、はい。楽しかったです、ありがとうございました」


「礼儀正しい子は好きだよ。こちらこそ、ちゃんと話せてよかったよ」


「人識探すの、頑張ってくださいね」


「ああ、そうだ。ちゃん」






思い出したといわんばかりに言葉を紡ぐ。

まるで、明日の予定でも訊くように、当たり前のように。






「妹にならないかい?」






・・・・・・ぜひ!!と言いたいけど、とても魅力的だけど、でも。






「ごめんなさい」


「君ならそう言うと思ったけどね。残念だ。何か理由があるようだし、人識も世話になっているようだからね。

 君は、は『合格』だね」


「あ、ありがとうございます」


「それじゃあ」






といって、双識さんは額にキスをしました。






「そ、双識さん?!!」


「やっぱりちゃんは妹じゃないほうがいいね。近親相姦になってしまうからね。じゃあ、またどこかで」


「・・・・・・・兄弟め」






去っていった双識さんの後姿を恨めしうそにしばらく見つめた後、溜息を吐く。

弟が弟なら兄も兄。変態兄弟なんですか?・・・・やめて。額をさすりながら切に思った。

















       









≫久し振りの更新です。ご無沙汰です。兄さんが出てきました。
 じゃべりすぎだろ兄さん・・・!!!はい、そんな感じです。
 次は殺し名のご登場?!!がむばります。(20050830)