第 拾伍 話
3時間以上車に乗って(かなりぎゅうぎゅうだった。酸素が無くなる!)
ここ、斜道卿壱朗研究施設に着いた。
いーも退院して、サイコロジカル編に突入したわけだけど、ここまで来てしまったか・・・。
そりゃ帰りたい訳じゃないけど、(まだまだ楽しみたいし!)私までここに来ちゃってるし、ね。
友に誘われては、断れないし。
でも、それ以前に・・・・・・・・・・・・
志人君と兎吊木さんに逢いたいじゃないですか!!!(95%こっちの理由)
お馴染みのフィアットから降りて志人君を待っているのだけれど、中々来ないし。
と、思ったら、つかつかと歩み寄ってくる人1人。
「どーも」
いーの傍に立っている私はそのいーの言葉が誰に向けられているかもう随分と前から解っている。
身長は平均的。いーよりも3つ年下。けれどその目は、いーには劣るけれど邪悪そうに濁らせている。
スピードを落とすことなく 大垣 志人 はいーに向かってきた。
(うわー、本当に顔近いなー・・・・・、って本当近っ!!!)
「お前が≪
「いや、違うよ。ぼくはただの付添いくんというか、解説くんというか。
昔風に言うのならアッシーくんといったところだね」
志人君に逢えてすごく嬉しくて話しかけたいのは山々なんだけど、これからいーと志人君の
ラブラブ会話口論が始まってしまうので、口が出せない。声かけらんない。
くそ・・・・いーの奴、美味しいとこどりしやがって・・・・!!!(違う)
ごすっという効果音がつきそうな位の音で、散ってた意識が戻ってきた。
隣に何時の間にか立っていた鈴無音々さんが、いーに次なる攻撃(でこぴん)をしていた。
「何をやってるのよあんたは。ったくもう、自分の手柄でもないことをそんな自慢げに」
思わず、鈴無さんを凝視してしまう。
そりゃ小説で読んでたから、その凄さは分かってたけど、実際に見ると、ほんと、痛そう。
(絶対にあの拳だけは食らうものか!)
志人君も驚いた顔をして、
「・・・・ああ・・・・いや、いやいや・・・・・。
そりゃ別に、まぁ、なんだ、おれは構わないけどよ・・・・・・」
と、しどろもどろに答えた。
鈴無さんは満足したらしく、いーから手をどけた。
「アタシはこの3人の保護者の鈴無音々。よろしくお願いするわ。
それともう1人・・・・・・」
鈴無さんは私を見て「ちゃんも自己紹介するんだわよ」と言う。
大人しく鈴無さんの言う通りにする。(やっと志人君としゃべれる)
「 です。宜しくお願いします」
「・・・・・おれは大垣志人だ。ここで卿壱朗博士の助手をやってる・・・・・・
よろしくお願いしてやるよ」
それを言うと、また歩き始めてしまった。
*
志人君に呼ばれ、鈴無さんの事を説明し終わった後、しばらく沈黙し、また志人君が口を開いた。
「で、あいつは何者なんだよ」
「あいつって言われても、僕にはわからないよ」
「黒ねーちゃんの隣にいる女だよ。あれも何か?≪
「・・・・・ああ、ちゃんね。いや、違うよ。彼女は全く関係ないよ。彼女は僕専用のメイドさんだからね」
「んなわけねーだろ。もっとマシな嘘つけねーのかよ」
「戯言、といってほしいけどね」
志人君はちらっと後ろを横目で見て、また僕に向き直る。
ちゃんがメイド服着たら可愛いんだろーな・・・、って一回着てしまっているか。
家では、メイドのような仕事はしているけどね。
ま、こんなのも戯言でしかないんだけど。
「そんなのは別にいいけどよ、何でお前らについて来てんだよ。必要ねーだろ、来る意味もねーし」
「それは本人に訊いてみないとね。年は君と同じぐらいだから話しやすいんじゃない?」
「よし分かった、今すぐにでも訊いてって何でだよ!」
「面白いね」
また悪い虫が付きそうだ。
そう思うと、自然と溜息がこぼれた。
*
真っ白い何もかいてないサイコロが並んでいる。
この建物から受けた私の第一印象がこれだった。(流石、サイコロジカルだけある)
自然には程遠いせいか、違和感を感じずにはいられなかった。
「お名前をお願いします」
どこにあるか分からないスピーカーに向かって、志人君がIDを言っていた。
スピーカーが分からないなら、監視カメラも分からなかったり・・・・・?(プライバシーなんてないな)
「早く入れ。すぐにしまっちまうぞ」
「志人君、ちょっと待ってよ!」
志人君に呼ばれたので、急いで中に入った。
真っ白な、真っ白な世界。いーのお見舞いで何度も行った、病院に似ていた。
「そこで待ってろ」
と、志人君は喫煙ルームのような場所を指で示した。
「おれは博士に報告してくるから。すぐに呼びに戻ってくるから、
あまりリラックスするんじゃねえぞ」
志人君と目が合ったので、目を逸らすのは失礼だと思ったので、笑いかけてみた。(我ながらキモイ)
ら、一瞬驚いた顔をしたかと思うと、すぐに踵を返して行ってしまった。
うー、第一印象最悪じゃないか自分。折角仲良くなれるチャンスだったのに・・・・・!!
みんなソファに座ったので、私は鈴無さんの隣に腰を下ろす。
鈴無さんはポケットから煙草を取り出し、口にくわえてジッポで火をつける。
「・・・・・・ああ、やっと吸えただわ」
「お疲れ様でした」
「本当、疲れたんだわよ。ま、あおちゃんとちゃんが居るから疲れなんて吹っ飛んだわ」
「それはー・・・、ありがとうございます」
「美少女2人に逢えてアタシは幸せなんだわよ」
「いや、友はいいとして、私は違いますよ」
紫煙を吐きながら言う鈴無さんはカッコイイ。様になってるな・・・。
自分が可愛いなんて、しかも美少女だなんて思ったことない。(当たり前だ)
そんな事を面と向かって言われると、恥じらいが先にたつ。
「ちゃんのその謙虚なとこアタシはいいと思うわ。どっかの誰かとは違ってね」
「あはは、ありがとうございます」
ここでもいーに説教をするのですか。
ま、いーは謙虚ではないしね。戯言で人を壊す人間だから、かな。鈴無さんは十分にいい人だと思う。
さっき鈴無さんは煙草が似合うと自分でいったが、ここでいーや友や人間失格なんかが煙草を吸ってても、
全然様にならない。その光景を思い浮かべて自分で笑った。
そうこうしてたうちに、志人君が戻ってきた。
「博士がお会いになるそうだ」
と急かす。重い腰を上げて志人君の近くへと移動する。
「こっちだ。急げよ」
「はーい」
言葉を返してみる。が、あえなく撃沈。完璧に嫌われたかな、私!(自業自得)
仕方なく、志人君の後ろをついて歩くことにした。
「失礼のないようにしろよ。特にお前だ」
といーに注意?してから私に向いて「お前もだ」と言った。
「お前も一言も話すな。博士に何訊かれても絶対に答えるんじゃねえぞ。いいな」
「それは別にいいけど・・・・・、何で私まで?」
「お前に教える必要はねえ」
そんな事言われる見覚えないんだけどな。ここに来るまでいい子ちゃんしてたし。
「姿勢を正せよ。それじゃあ・・・・・・・失礼します、博士」
そして扉は開かれた。
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≫サイコロジカル編に突入いたしました!そしてセリフをハショりすぎて会話も少なめ。
む、難しいなぁ・・・。はやくうつりーに逢わせたいです。
志人君は可愛いです。突っかかってくるとことか可愛ええです。
次はー・・・、おじいちゃんしかでないかも。(20050923)