第 拾陸 話









7年振りの邂逅を果たした友と卿壱朗博士。

小説どおり、険悪なムードになっているけど、私としては暇でしかない。

一回以上読んでいる話をまた聞く気はないし、欠伸を噛み殺すのでさっきから大忙しだ。

私としては、早く兎吊木さんに逢いたい。(そればっかり言ってるなぁ・・・)

戯言キャラには全員逢いたいし、話してみたい。

折角、この世界に来たんだから、このくらいの我侭ぐらいは許して欲しいと思う。



それにしても、暇だな・・・・・・・・。






「そうさせてもらいますよ。どうせそんなところでしょうからね」






いーが両手を広げて、友に声をかけた。(もうそこまで話がいってたんだ・・・)






「友。じゃ、ぼく、さっきの喫煙ルームにいるから」


「いー、私も行くよ」


「・・・・・ちゃんも?別に僕に気を遣わなくても大丈夫だよ?」


「もう限界。これ以上立ってたら立ったまま寝ちゃうよ・・・」


「わかったよ。そういう事だからさ、友」


「うん。分かったんだよ、いーちゃんにちゃん。

 すぐに行くから、迷子にならずに待っててね」






友の笑顔で少しだけ心が安らいだ。やっぱり癒し系は必要でしょ。






「よし。それじゃあ志人くん、一緒に外で待ってようか」


「私は、『突撃☆志人君のプライベートルーム!』がやりたいなー」


「おう、分かった、じゃその辺も案内してやるついでに見せてやるよ・・・・・ってなんでだよ!

 さりげなくおれを友達みたいに誘って部屋に入ろうとするんじゃねえ!」


「冗談だよ」


「チッ・・・・・・嘘ですよー」


「(いま絶対舌打ちしたなコイツ)」


「そこのお嬢さん、ちょっと待て」


「?」






部屋から出ようと振り向こうとした時、博士に呼び止められた。

志人君に目を向けると、しゃべるな、と目で言われた。(要するに睨まれた)






「お嬢さんの名前を、聞きたくてね」


「・・・・・・・・・ です」


「・・・・・・、か。いや、引き止めて悪かったね」


「いえ、それでは私はこれで。失礼します」






博士に一礼して、いーの後に部屋を出た。

さっきの喫煙ルームに来て、お互いソファに腰を下ろす。

もう限界に近いと言ったのは本当で、最近頻繁に眠気が襲ってきて、寝てしまう。

そうすると、中々起きない。叩かれたりしない限り、起きないようになってしまった。(どこぞの姫かっての)

そして今がその限界だったりする。






「いー、私、寝るから友が来たら起こしてください」


「どうぞ、安心して心置きなくお眠り下さいませ」


「んー、いー、おやすみなさい」


「おやすみちゃん」






ソファに横たわり、瞼を閉じたらすぐに深い眠りへと落ちていった。



















*




















「起きて、ちゃん、置いてくぞ」


ちゃん、起きるんだよ!はーやーくー!!」


「う・・・・あ?ペチペチ痛いよ・・・・・?」


「起きた、起きた!ばっちり熟睡してたね、ちゃん!」


「・・・・・・・・・、と、友、さん?」


「わわ、まだ寝ぼけてるよ。音々ちゃん!!」






低血圧万歳。などと言ってる場合ではなくて・・・・・・。

ばしっ!と、頭をはたかれ(叩かれ)た。






「痛っ・・・・・お、おはようございます。起きました」






鈴無さんが起こしてくれたらしい。頭がじんじんする。(い、痛い・・・)

もう話は終ったらしく、友、志人君もいる。

ね、寝過ごした・・・!!?というか、いーに起こしてって言ったのに!






「おら、起きたんなら早くいくぞ」


ちゃん早くー!!!」


「わ、分かったから、ちょっと待って・・・」






身体を起こして、乱れた髪と服を直して、友の隣へと走り寄っていった。



















*



















第7棟、兎吊木垓輔の研究棟


何だかんだでここまで来れた。やっと、兎吊木さんに逢える!

玄関口に行くと、志人君が苛立たしげに待っていた。






「しーとー君っ!」


「・・・・・・お前だけだよ、おれをちゃん付けで呼ばねえのは」


「鈴無さんも呼んでないけどね」


「その前に名前も呼ばねえけどな」


「それもそうだけどね。・・・・・私だって鈴無さんに怒られたくはないし」


「ああ、あれは痛そうだったな」


「脳細胞が億単位で死滅しちゃったよ・・・。ほんと、痛かった」






あの拳だけは食らうものかと思ってたけど、本当、痛かった。






「でも、志人君だって私を名前で呼んでくれないよね」


「べ、別にいいだろ。お前なんか・・・お前で十分だ」


「じゃなきゃ、志人ちゃんって呼ぶからいいよ」


「黒姉ちゃんに怒られるぞ」


「鈴無さんは理由を話せば怒らない人ですよー」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


「・・・・ったく、気が向いたら呼んでやるよ」


「やったー!気が向いたらじゃなくてもいいから呼んでね、志人君」






そっぽを向いて苛立たしげにしてしまったけど、まぁOK貰えたからいいでしょ。

よし、野望達成!(人間失格が聞いたら、また変な癖とか言うんだろうけど)

玄関の入り口に目を向けると、いーと友が手を握って入ってきたところだった。

4階へ階段を上がって行き、また真っ白な空間へ出た。

志人君が幾つかある部屋の1つの前で止まり、ノックする。

当たり前だけど、反応ナシ。






「・・・・・・おかしいな。博士から連絡は入ってるはずなんだけど」


「寝てるんじゃないのか?」


「ぼけ。連絡入ってるのになんで寝るんだよ」






わかってる私は、あえて何も言わないで沈黙する。

志人君はノブに手をかけた。






「大垣です。入りますよ、兎吊木さん」






と断ってからドアを開けた。

誰も居ない部屋。スチール製の簡易椅子が1つ。何もない。






「くそ・・・・・・まさか逃げたんじゃ・・・・」






志人君が呟いた。私は知っている。

今ここに、もう1人居ることを。






「逃げてなんていないよ」






想像してたよりも、幾分高い声が部屋の入り口から響いた。






「失礼なことを、そして間違ったことを言わないでくれるかな、志人くん?

 失礼でも真実を口にすることは構わない。間違っていても礼儀を弁えていれば俺は許す。

 だけどその両方ってんじゃいただけないな。全然いただけないよ志人くん。

 それともきみは俺に何か逃げなければならない理由でもあると言うのかい?」






みんなが振り返る。私は別に驚きもせず、ゆっくりと振り返った。

そこには確かに、 兎吊木垓輔 が存在していた。












       








≫微妙にうつりーのご登場。セリフ一番長いと思う。てか、じいちゃんしゃべったの少しだし!(笑)
 これ、後半結構ハショります。展開速いような、遅いような気がしますよー。
 次回は、うつりー大活躍☆にしたいです。途中にあった「どこぞ姫かっての」はツバサのサクラちゃんです。
 そんな感じです。(訳わかんねェ)(20050925)