第 拾玖 話
あの後、志人君に案内してもらって(もう外は暗くなってて、宿舎がいい感じになってて本当、恐かった)
(志人君がいなかったら泣いてたかもしれない)志人君と別れて、
みんなに軽く挨拶して、そのまま部屋に入った。
先にお風呂に入らせてもらい、少しばかりの夕食をとった後、倒れるようにベットに沈んだ。
はぁ・・・・・なんかもの凄く疲れた。
人と話すだけなのにこんなに疲れるなんて。正直、初めての体験だけど、相手があの変態
なのだから仕方がないといえば仕方がない。
今、零時の会議をしている筈なのだけれど、私はどうも参加する気分じゃない。
垓輔さんの救出作戦なわけだけど、結果を知っている私は何も言えないわけだから、
聞いていても意味がない。そもそも私は関わってはいけないのだ。
だったら何でここまで着いて来てるんだろう・・・って思う。
自分の事なのに、ううん、自分の事だから、尚更分からないのかな・・・・。
あー、もうちょっとポジティブに物事を考えよう!!流されちゃ駄目!
それにしても胃がムカムカして気持ち悪い。
垓輔さんが最後に言った約束も気になるし。嫌な予感がする、とはこの事だろうか?
明日には事件に巻き込まれているから、まあ、何とも言えないけど、それとは違う何か。
「うーん・・・・・、よくわかんないけどさ」
私にもよく、わからないけど。ま、気のせいかもしれないしね!(ポジティブに!)
「そういうことで、寝るとしますか!」
誰に言うでもなく、独り言を呟いて目を閉じる。
明日は寝坊しよう。
*
そこは、真っ暗な完全なる闇だった。見渡す限り、闇。全てが闇だった。
真っ暗。でも、本当は目を開けてないのかもしれない。それでも闇には変わりなかった。
霞がかかったように、ぼんやりとしか働かない脳味噌。フィルターでもかかっているように。
ここは何処だろう、と、働かない脳味噌に問いかけても、何も分かるはずもなく、
それでも一度、ここに来た事があるような錯覚。そういうの、何ていうんだっけ?ま、いっか。
まるで これは私ではないような
まるで それは私のような
歩く。本当は走っているのかもしれないし、走っても歩いてもなく、立ち止まっているかもしれない。
それでも私は進んでいる、気がする。
わからないけど、わかる
わからないから、わかってる
ただ、闇に存在する。この安心できる闇に。居心地がいい。
安心できるのに、不安が胸を駆り立てる。こわくて、こわくてどうしようもない、この感情。
私は何時、帰れるの?
私は何でこの世界に来てしまったの?
私は物語に干渉してはいけないはずではないの?
でも、私が行動していれば救える命もあるよ?
私が止めていれば、私が手を伸ばしていれば、声をかけていれば、大切な人を、護れたよ?
見殺しにするの?
干渉してるよ?物語を変えちゃうよ?本当にそれでいいの?
私がいなくても、どうでもないよ?私が頑張っても、何も変わらないよ?
ねえ、私は何者なの?何もしらないの?
止まらない止まらない止まらない止まらない止まらない止まらない止まらない止まらない止まらない
ヤメテ ナニモイワナイデ ワタシハワタシハワタシハ イッタイナニモノナノ?
―――――― 見つけなさい
だ、誰なの?見つけるって、何を見つけるの?
―――――― 自分なりの答えを 見つけなさい
私なりの、答え?
―――――― 自分を見失わないで 何があっても負けないで
・・・・・・・・・・
―――――― あなたはみんなの 希望だから
光が、見えた気がした。
*
目を瞑っていても臭いはわかる。そう、それは当たり前。
そして、この臭いは、酷く強烈。
急いで目を開けて、身体を起こす。頭は何故か、冴えている。ただ、可笑しいのは。
「!!! ひっ」
悪臭。鉄の臭い。酷い。酷い。血。赤く、滴って。それは。腕が無い。もう人じゃなくて。
目なんて、存在して、なくて。黒く、赤く。血。血。血。死の臭い。何。私は。死んでる。
死。死。死?私は。どうして?何で?ここは、何処?赤。赤。赫。黒。笑い声。あいつが。
「何で何で何で何で何で何で何で何で」
「どうして私が、これ、何、わかんない、わかんない」
死に魅せられる。目の前にある、恐怖。満たされた空間。閉ざされた闇。止まった時間。
「うっ・・・・・ふぅっ、はぁはぁはぁはぁ」
気持ち悪い。気持ち悪い。眩暈。くらくら。痛い。全てが。痛くて堪らない。拒絶。痛い。
どうしようもない、この気持ち。頭が可笑しくなりそうな嫌悪感。
「誰か、誰か、誰か、助けて。た、たす・・・け、て」
そこには私独りだけで。ここには私独りだけで。孤独。
誰か、誰か。お願いよ。気づいて、気づいて。私は、ここに、います。いるから。
目の前の光景に唯、恐怖する。
声が、出ない。叫びたい、叫びたい。悲鳴を。
体が、動かない。逃げたい、逃げたい。誰か、私を。
私の前で、兎吊木垓輔の死体が、そこに存在していた。
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≫グロくはなかったですね。名前変換皆無。(20051015)