第 弐拾 話









回りだした歯車は止められない。神様にだって。



















何でこんな事に。私は、また、何かして。何したの?

待って、何で混乱して。でも、私のせいで。救えたかもしれないのに。私の、私の。






「誰か、いるのか?」






誰か、来た。

違う、私じゃ。






「うっ・・・何だこれ・・・て、おい?!何で、お前が。何で泣いてんだよ。

 何でここにいんだよ!!お前、まさか!!!」


「違う違う違う違う違う違う違う違う!!私は、私は!!!」


「落ち着け!!!わかったから!わかったから、そんな」






そんな顔するなと。壊れていきそうだと。瞳には何も映っていない。恐怖が渦巻く。

疑問は沢山あるけど、まずはを落ち着かせなければいけない。

そう思い直して、を抱きかかえて血の臭いが充満した部屋から連れ出す。

はずっと脅えて、違う、と止まることなく呟いていた。いや、呟いている、か。

ソファに座らせて、上着を肩にかけてやる。それでも、ずっと脅えていた。

の顔を覗き込むように前に座り、問いかける。






、聞こえるか、


「違う、私じゃない。私がやったんじゃない。違う、違う違う」


「わかってる。お前がやったなんていってない。信じろ、疑ってなんかいない」


「違う違う違う違う違う。私じゃな「!!!!」


!しっかりしろ!!いい加減目ェ覚ませ!!!」


「ひっ」






両手で顔を包み込んで無理やり顔を、目を合わせる。

何時も白い顔が、青白くなって、瞳は恐怖で染まり、涙が頬を伝う。


黒い瞳がおれを見つめた。






「し・・・・・志人・・君?あれ?私、どうして」


、大丈夫か?」


「・・・うん、多分、大丈夫。私、どうしてここに?」






手を離して、と向き合う。






「おれが来た時には、もういたけど、お前こそどうして中に入れたんだ?」


「・・・わからない。目が覚めたら、もう、あそこにいたから、どうやって入ったか、わからないの。

 私、ベットで寝てた筈なのに。何で?全然わかんないよ・・・」


「そうか・・・・・。あれは、お前がやってんじゃない。そうだな?」


「・・・うん。信じて、くれるの?」






瞳は、不安で揺れている。今のこいつは、硝子みたいで、触れたら壊れてしまいそうで。

だからこそ、おれが支えてあげなくちゃ、駄目なんだ。






「信じてる。大丈夫だ、博士になに言われたって、おれが助けてやるよ」


「うん。うん、志人君、ありがと」


「うおっ、おい!いきなり倒れるな!」






安心したのか、また眠ってしまった。

どうしたもんか。そろそろ博士にこのことを報告しなくちゃならない。

さっきはあんな事を言ったが、博士から護りきれるかわからない。がどうしてここに居たのか、

本人でさえ分かってないのだから、アリバイなど成立するわけがない。

どうしたもんか。


・・・・・・。には悪いけど、別な部屋で少しばかり寝ててもらうか。


この事件の、ほとぼりが冷めるまで。


彼女を、部屋まで運んだ。


















*



















「起きて下さい。お友達(ディアフレンド)






初めて聞いた声だけど、初めてではないそのセリフで目が覚めた。何だか今日は寝てばかりだ。

首だけ動かして声がした方を見ると、石丸小唄さん、もとい、哀川潤さんが居た。






「・・・・・おはようございます」


「おはようございますわ。全く、何時まで寝ているおつもりですか」


「え?私そんなに寝てました?・・・・・どういった状況ですか?」


「・・・十全ではありませんね。今は博士とお話ってところでしょうか。

 そろそろで私も第四棟のほうに移動しなければなりませんし。時間はまずまず、と言った所でしょうか」


「・・・そうですか。ありがとうございます」






それにしても、潤さんは相変わらず変装が得意だなっと。などと、のん気なことを考えてみる。

でも本物の小唄さんを見たことがないから、似てるのかどうかはわからないけど。

なんて、潤さんのことなのだから、完璧なのだろう。(潤さんにできないことはない!)






「お?何だ?やっぱし正体ばれてんのか?なーんだ、ビックリさせたかったのになー。

 おねーさんガッカリ」


「・・・・・・・・?」


「あたしが読心術使えるのはまさか忘れてなんかいないよな?」


「ええ、そりゃあもう、鮮明にそれはもう記憶しまくっていましたとも!」


「嘘は人間の終わりってな!・・・冗談だ。そうがっかりすんなよ」


「で、潤さん。博士、何か言ってましたか?」


「そこまでは聞いてないよ。でも、あの少年が庇ってくれんじゃねーの?

 ・・・・・時間がないから最後に一つだけ、に質問させてやる」






最後に、一つだけ。

私が一番知りたい事。それは、考えなくても、決まっていた。






「どうして、私はここに居たんでしょうか」






もしかしたら、って思ってるけど、それは推測でしかないから。

でも頭から離れない。昨日、別れるときにしたあの、意味深な約束。

この靄を、フィルターを拭い取ってくれるのは、潤さんしかいないから。






「・・・・・・兎吊木がつれて来た。わざわざ何してんのかねー、あの野郎は」


「(やっぱりそうだったか・・・)そう、ですか。はぁ、ありがとうございます」


「そんじゃーあたしは行くから。の無事はみんなに伝えといてやるよ。

 それでは、十全なる機会がありましたらまた逢いましょう、お友達(ディアフレンド)


「はい、また」






そういうと、潤さんは颯爽と部屋から出て行ってしまった。



・・・・・さて、私はどうするべきなのかな。そもそも何で垓輔さんが私を連れてきたのかわからないし。

それは直接あとで本人に聞くことにしよう。(我ながら結構チャレンジャーだと思う)

とりあえず、何か食べたいなーなんて、またのん気なことを考えながら、

別なことも考える。


これから、私はどうしたらいいのかを。






今度垓輔さんに逢ったら、まず一発殴ってから、あの質問の問いに簡潔に答えてやる。











       






≫なんか微妙なトコで切ってしまった。はい。志人君夢か、これは。違いますよ。
 はい。なんか、ぐだぐだですみません。逃げる!(20051015)