第 弐拾陸 話
セミの鳴き声も聞き慣れた。肌を刺すように熱する紫外線。ダルイ身体。盆地の京都。
8月9日、アパート前。アパート住人のほとんどが外に出ているという状況。
「はい、ちゃん。シロップはそっちにあるから、自分で好きなのかけて食べてね。
スプーンある?」
「あるよ。いー、ありがとう!!」
「(万遍の笑顔が眩しい!いや、可愛いけど。戯言抜きで)どういたしまして」
只今炎天下の中、みんなでかき氷食べてます。
ぼんやりと思った私の思考が、今何故かこうして実現しているのにはちょっとした理由が
あったりなかったり。(どっちだ)
事の発端は、私が「夏といえばかき氷。ああ、かき氷食べたいなぁ、みんなで」と言った所、
いーが、何を思ったのかいきなり、「かき氷食べよう!!」なんて。
そんなのいーのキャラじゃないよ!!!!(失礼)
でも、こうして私の我侭?に付き合ってもらったんだから、後で何かお礼をしないと・・・。
コンクリートに置いてある数個のシロップの中の王道なイチゴシロップを取る。
てゆーか、いーはどこから持ってきたんだろう、シロップとカキ氷機。
いーは生活に不自由しないぐらいのお金(もしくはそれ以上)を持ってるからシロップは大急ぎで
買ってきたとしても、カキ氷機はー・・・・・・・、どこから?
・・・・・・・・・・・・ま、誰かから借りたってことでいいか!!
どばどばとイチゴシロップを大量にかけて、一口食べて空を仰いだ。
青いなぁ・・・・・・・、次はブルーハワイにでもしようかな。
「、何してるんですか?空なんか見て」
「うあおっ?!!」
黒髪タレ目煙草死神美少年が覗き込んできた。
急いで顔を上げて後ろを見ると、美少年がお腹を抱えて肩を震わせている。
「・・・・・・・って、ちょっと萌太!!いつまで笑ってんの!(うあおって何だ自分!)」
「クスクス、す、すみませ・・・(うあおって何語ですか・・・、ほんっと可愛い反応ですね)」
「涙眼になるまで笑うんじゃない!!!もうっ、萌太のバーカ!(恥ずすぎるよママン!ヘルプいー!)」
「(頬膨らまして拗ねるとか、どんだけ可愛い反応すれば気がすむんですか、は。
耳まで真っ赤にしちゃって・・・。からかい甲斐があるってもんですよ)
そう怒らないでくださいよ。あんまりにもが可愛い反応をするもんですから」
「何だそれは!!もう少しマシな言い訳をしろ!私が可愛いなら、世界中の女性が可愛いんだよ!!」
「(は普通のそこら辺の女よりは格段に可愛いのに、気づいてないなんて。
の可愛さの右に出るものはいませんよ、この地球上にはね)」
顔が熱い、萌太のせいで。や、太陽のせいでもあるかもしれないけど。
少し離れた所に居た萌太は、「隣、失礼しますね」と一応私に断って(許可してないけど)隣に
腰を下ろした。な!態々私の隣に座らなくてもいいじゃないか!!
恥ずかしさと上がった体温を下げるためにかき氷をまた口に含んだ。
イチゴ味が口に広がる。ひんやりと喉を通る氷が心地好い。やっぱいいなぁ、かき氷。
「メロンシロップ取ってください」
「ひふんへひょへはひーれひょ!!(自分で取ればいーでしょ!!)」
「(スプーン口にくわえたまま拗ねないでくださいよ)まだ怒ってるんですか?
謝ったじゃないですか。それともは僕を許してくれないんですか?」
いや、そんなしょげなくてもいいじゃんか・・・。わ、悪くないのに罪悪感が・・・。
くそう、敬語キャラ恐るべし!!!
・・・・・・・・ま、別にそんなに怒るようなことじゃなかったよね。
「私がわるか「は優しいから許しますよね(にっこり)」
腹黒さん光臨!!!(背後のオーラがどす黒く見えるのは目の錯覚だ)
「どうぞメロンシロップを心置きなくお使いください」
「も使っていいんですよ?これは僕とのメロンシロップなんですから」
「(みんなのメロンシロップです)有り難く使わせて頂きます」
笑顔の脅迫が恐いぜ!!涙が出ちゃう、だって女の子だもん!
ヘルプ!!人生最大の危機に陥っております、はい。助けてください!!!
「萌太、に何してるんですか?」
「・・・・・・・・・(チッ)崩子ですか」
「ほ、崩子ーーー!!!!!!!」
この子
目の前に立っている崩子に抱きつく。ああ、可愛いなー!!可愛すぎてどうしよう!
「(ふっ、ざまーみやがれ。萌太にはは渡しませんよ)」
「(僕だってまだに抱きつかれた事ないのに。崩子、覚悟しててくださいね)」
「・・・って、ごめん崩子!暑苦しかった?!ほれ、こっちに座り」
「(チッ、まぁいいです)全然大丈夫でしたよ、逆に嬉しかったです。に抱きつかれるの、
わたしは嫌いじゃありませんから」
「(何ていい子なの!)崩子、萌太みたいにはならないでね、絶対だよ」
「それはどういう意味ですか?」
「(ひっ、)いえ、私の失言です、忘れてください、すみません」
崩子は少し躊躇したけど私の隣に腰を下ろした。イチゴ味にしたらしく、訊けば「と同じ味が
食べたかったんです」との事。・・・・・っ、可愛すぎるぜコノヤロウ!抱きつき一回の刑。
「!レモンシロップ取ってくださいです!」
とてとてと、走り寄ってくる姫が危なっかしくて可愛いよ!!めんこい子がいっぱいで幸せ。
レモンシロップの瓶を姫に渡す。
姫は私の目の前に腰を下ろす。・・・・・コンクリ熱くないのかな?
「姫はレモンが好きなの?」
「うーん、色が好きですね。そういうはイチゴ味が好きですか?」
「私はどの味も好きだなー。あ、でも流石に全部の味を混ぜようとは思わないよ」
「は貪欲ですね!そういえばさっき、春日井さんが全部混ぜて食べてたですよ」
「私の事を呼んだかな?」
「あ、春日井さん・・・、えっと、呼んではいません、多分」
春日井さんがぬっと登場してきたと思ったら、その後にみんな続いてきた。
シロップがこっちにあるんだから、当然だけどね。それより春日井さん、あなたくノ一ですか!
みんな周りに腰を下ろして思い思いのシロップをかき氷にかける。
「春日井さんはどのシロップかけますか?」
「うん?うんとね、全部」
「・・・・・・・・・・・・チャレンジャーですね、どうぞ」
「どういたしまして」
絶対、ドリンクバーでも全てのドリンク混ぜ合わせるタイプだ。
恐るべし、春日井さん。チャレンジ精神の塊のような人だ。私には真似できません。(したくもないけど)
そして普通に食べてる。・・・・・・・モザイクかけた方がいいって!
これ昼間に見ちゃいけない映像だから!色んな意味でR指定だよ?!!
「食べる?ちゃん」
「遠慮させていただきます」
「そう?遠慮しないでたーんとお食べ。なに、別にちゃんを食べるわけじゃないよ?多分」
「おい、春日井、いい加減にしろ」
「(第二
「いっきー食べる?意外と美味しかったりなかったり?」
「しかも疑問系かよ。いりませんよ、そんなもの」
何とかいーのおかげで春日井さんの魔の手から逃れられた。あんなものを食べ物とは呼ばん。
みいこさんはクールにブルーハワイを召し上がっている。
「みいこさん、かき氷おいしいですか?」
「うむ、なかなかいけるものだな」
「みんなおいしそうに食べてくれて、言った甲斐がありました」
「そうだな、には感謝せねば。ありがとう」
「いえいえ、お礼はいーに言ってください。喜びますよ、きっと(じゃなくて絶対)」
「いの字にか?・・・まあ、礼を言っておくか」
みんな、楽しそうに笑って、いる。すごく、幸せな気分。
「僕もかき氷食べようかな。ちゃんはさっきどの味を食べた?」
「ん?イチゴだよ」
私もアパートのみんなと家族みたいに、なれたのかな?みんなの隣に居られてる?
「うむ、私は今度は抹茶にしようかな」
「今度は練乳も混ぜてみようと思うんだけど、いっきーはどう思う?」
「納豆もプラスしたら上出来ですよ」
元の世界にもそりゃあ、戻りたい気持ちはあるし、家族とか友達とかどうしてるか心配だけど、
「、今度はどの味にするんですか?僕と同じメロンですか?」
本当は、元の世界に帰る方法とかも探さなきゃいけないんだけど、
「わたしはまたと同じがいいです。でも、メロン味だけはやめてください」
だけど、
「は姫ちゃんとレモン食べるですよ!」
だけど私は、
「それなら抹茶にしたらどうだ?」
それは唯のわがままに過ぎないけど、
「私の特製『春日井印のかき氷』の方がオススメだよ」
でも、まだここに、みんなの隣にいたい。
「何みんなしてちゃん困らせてるんですか。それに舌がカラーリングされてる」
「ほえ?!姫ちゃんのベロはどーなってますか師匠?!!」
「見事に黄色になってるよ」
「ふぎゃ!!じゃあじゃあ、は何色?!」
みんなの隣に居たいんだ。
「イチゴ味だもん、赤だよ」
そう答えて私は、わらった。
こんな日々が続くといいと思った。ずっと、ずーっと続けばいいと願った。
いつかきっと別れる時が来るけど、その時は笑って別れたい。
誰一人欠けることなく別れたい。
手を広げては握り締める。
誰も、失いたくないよ。
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≫番外チックにお送りしました、久し振りの更新です。最後はシリアスかい!(笑)
シリアス好きらしいです。前半はギャグ頑張りましたが。セリフが誰が言っているのか
分かりにくいですが、口調で判断してください!!(絶対無理)すみません OTL
次は出夢くん出るといいなーとか。多分出ます。季節感無視しまくり。だって夏なんだもん仕方がない!(死)
夏を思い出して頑張ります(笑)(20060122)