第 弐拾玖 話
それから。いーと(手なんか繋いじゃいないけど)一緒に部屋に戻った。
部屋に入ると一気に視線が自分に集まるのが分かった。そういうのは好きじゃないから
視線を部屋のすみに泳がせた。・・・・・見られるのに慣れてないんですよ。
「・・・・・・何でがいるですか?師匠。
はお家でお留守番してるはずですよ?それと、春日井さんはどうしたですか?」
じーっと心底不思議そうに私を見てくる姫。だから見られるのに慣れてないんだってば!
それにしても、なんだかずっと姫に逢ってないような、不思議な感じだ。
うーん。取り合えず後で抱きしめておこう。いっぱい、いーっぱい、いーっぱい。
「帰っちゃった。
本当、無謀だよねあの人は・・・・・無為無策もこれ極まり、何考えてんだか分かんない
というより、何も考えてないって感じだな。こっから歩いて帰るって。
あんな軽装で山越えなんて、無茶するよ・・・・・まあ、帰りに拾っていけばいいんだけどさ」
そこでいったん区切って、私を流し目で見て、また口を開いた。
「ちゃんはなんて言うか・・・・・置いてきぼりにされたのが嫌だったんだってさ。
でも、いいんじゃない?姫ちゃんも、ちゃんがいた方がさ」
「・・・・・ですか。そうですね、姫ちゃんもがいた方が百人力ですし」
「ありがとう」
姫は春日井さんが居なくなったことでしょんぼりしていたけど、私に向けてにこりと、
笑ってくれた。・・・いーと姫には本当に感謝だ。いーは何とか誤魔化してくれたし、
姫だって同意してくれたし。本当に、ありがとう。
いーは木賀峰教授に向き直り、「あの・・・・・なんか、すいません」と謝った。
そこで私は初めて、木賀峰教授を見た。
一方的にこちらが知っているだけだから、相手は勿論、私を知っているわけがないけど、
私は小説で読んで、扉絵もあったから初めて見たわけではないんだけど、
なんていうか、えーっと・・・つまり!まともに姿を捉えたのは、今この瞬間が初めてだった。
『死なない研究』の後継者。
「いつものことなんです。本当、いつものことなんです。
なんていうか、彼女、サイコロ転がしたような性格してますから・・・・・・
それに、神出鬼没系ですし」
「・・・・・・・そうですか。だとすればどうしてだかさっぱり理解不能ですが、
嫌われてしまったようですが・・・・・・・ねえ、朽葉」
助教授は朽葉ちゃんに視線を遣る。
『死なない研究』の実験体。
『死なない少女』
「あなた、何か心あたりはありますか?」
「さあ・・・・・
申し訳ありません、先生。わたしには皆目見当がつきません」
朽葉ちゃんは視線を私に向けて、すぐに、逸らした。
・・・・・?何かしただろうか?いや、まだ話してもいないし、まして見たのは今が初めてだしで
まだ私は何もやっていない、と自信をもってここに断言できる!
大丈夫、まだお友達になれる機会はあるはずよ!(無駄な意気込み)
「となると、そちらのお嬢さんは・・・?」
「あ、はい、彼女が春日井さんの代わりとでもいいますか。
欠けたモニターは彼女がやってくれます。急なことで本当、すいません」
「です。よろしくお願いします」
深深と頭を下げる。
頭を上げるときに、理澄ちゃん(居たんだ、とかいう失礼なことは思ってないよ、勿論)
(ただちょっと忘れてたってだけだから!)と目が合った。
理澄ちゃんがにっこり笑ってくれたので、曖昧に笑みを返しておいた。
変装してるのにいいのかなあ、こんなんで。
「それでは試験は幸村さんと紫木さんと・・・さん、の3人ということで・・・」
木賀峰教授は立ち上がって言う。
「では今度こそ、こちらにお願いします
・・・・・そろそろ、いい加減始めないと、時間が限界
です」
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≫更新は割りと早いけど内容は薄め・・・ですね。でもまあ、切りのいい所はこの辺って感じです。
28話に収録した方がよかったかもしれませんが。
本当はここはやらない筈だったんですが、でも接点は書いたほうがいいと思ったので。
次は誰だろう?朽葉かもしれないし、教授か、理澄か出夢か、姫か・・・。(居すぎだろ)
まだ未定な感じですね!プロットしっかり立てて来週にはまたアップを!(20060616)